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『キ-64異聞』 表紙にもどる
 イオウジマからB-29に随伴して何度も日本上空に行ったよ。ジャップの戦闘機で手ごわかったのはアーミーのフランク(四式戦疾風)かな。まあ高高度では野生馬(P-51)の相手じゃなかったけどな。(中略)一度、キモを冷やしたことがあったよ。ナゴヤ上空だったか、いつものようにでかいやつ(B-29)のお守りをしていたんだが、仲間とはぐれちまったんだ。そんな時、トニー(三式戦)が単機で後方から追ってきたのさ。すべてにおいてP51の敵じゃないからなトニーは。楽勝で振り切れると思ったんだが・・・こっちは燃料が心配だから(格闘戦は避けて)スロットルを全開にしたのに、トニーはどんどん迫って来る。もうだめだと思ったね。完全に後ろを取られちまって。ところがトニーは俺を馬鹿にするように横に(機を)つけやがって、手を振って追い越していったよ。ありゃ、機銃の故障かなにかマシントラブルだったんだろうな。弾切れか。・・・おかげでこっちは命拾いさ。僚機?・・・帰ってこなかった。あの馬鹿早いトニーにやられたのかも知れない。

●米国「Batlle plains」誌より