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 大直径の「火星」エンジンを選定したのは当然、速力・上昇力のためであった。
航空機研究家秋本実氏は、雷電21型に勝る日本軍実用戦闘機は陸軍の「疾風」、雷電33型のみであるとした上で、「疾風」搭載の「誉」エンジン(陸軍名ハ-45)が額面通りの出力を出し辛かった現実を考えると、雷電は日本最高速と言ってもいいのではないかと記述している(ただし33型)。もっとも、完全に整備された状態の機体にオクタン化が適正な燃料を使い、同一の気象条件でテストするといのうは不可能なので、これを証明する手立てはない。
 しかし、世界を見渡せば雷電を上回る速度を誇るレシプロ戦闘機はP-51B以降をはじめにめじろ押しであり、速力に於いては欧米航空機先進諸国には一歩先んじられている。
 上昇力は日本戦闘機中最高。米軍のテストによると高度6,000メートルまで5’06”。同世代の各国戦闘機と比べても、P38、P39、P40、P51B、F6F、P47など並みいる米軍主力戦闘機を退け、適わないのはただ独FW1 90のみという優秀な上昇性能を示している。
 しかし、いかに上昇力が優れているとはいえ、極端に空気の薄い1万メートルの高みに迅速に達するのは、ターボチャージャーを持たない雷電には甚だ重荷といえ、高高度で侵入するB-29には苦杯を喫している。 
★その速力・上昇力
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