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 雷電がパイロット達に不評だったのは着陸速度の速さと視界の悪さであった。
着陸速度は、零戦が120km/hであるのに対し、雷電のそれは150km/h。日本機中最速である。これは全備重量に対して翼の面積が狭い、いわゆる翼面荷重の大きさによるもので(零戦の7割増し)、翼面荷重が小さく離着陸が楽な零戦に乗り馴れた古手のパイロットはその着陸速度にとまどい、着陸に失敗して幾人もの死者を出し、あげく『殺人機』の異名を奉った。ところが、経験が浅く零戦での飛行時間が少ない新米パイロットは先入観に捕わることなく、着陸速度が早い雷電にもの怖じすることなくトライし乗りこなしてしまっている。
  視界は機体の形状から零戦に比べるとどうしても悪くなってしまうのだが、艦戦である零戦と比べる事自体に無理がある。現にアメリカによるテストでは、滑走中は悪いが尾部が上がってしまえば良好、上昇姿勢、水平姿勢、着陸においても良好と結論している。
 着陸速度の速さといい視界の悪さといい、御大『零戦』の後釜に据えられた雷電はまったく違ったコンセプトをもった機体であったために、零戦こそ唯一無二という先入観に捕われた古参パイロットには甚だ不人気であった。口の悪いパイロット達の言葉。「雷電国を滅ぼす。国破れて銀河あり」
★『殺人機』とよばれる所以
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