私が激戦のマレー半島に着任して、いつしか1ヶ月という時間が過ぎた。地上部隊は破竹の進撃を続けている。我々の任務は地上部隊と密接に連携しながら前線の敵を叩くことだ。まだ日も昇らぬ早朝より出撃し、終日反復攻撃をかける。
度重なる出撃にもかかわらず整備兵の献身的な整備により、機体はいつも万全な状態だ。
進撃する戦車部隊の前方上空を飛び、敵戦車部隊の位置を把握し、爆撃し、少しでも敵の戦力を奪うのが私達に与えられた使命である。
南方の猛烈な陽射しを浴びつつ、我が機は今日も敵を求めて延々と続く椰子林の上を行く。
我々の翼下、その椰子林を割って猛進撃するのが、われらが帝国陸軍九七式中戦車部隊だ。我が精鋭戦車部隊が前線に現れると、敵は戦戈を交えるまでもなく、ぞくぞくと後退を始める。英軍なにするものぞ。戦車部隊はまさに皇軍の花だ。
花形の戦車部隊に追随するのは通称『銀輪部隊』。重装備の歩兵に自転車を与えることで、疲労を減らし進撃の速度を驚異的に速める。敵は橋梁を破壊しながら後退していくので、工兵とこの身軽な『銀輪部隊』はこの戦いではなくてはならない主役なのである。
部隊の上空を通過すると、兵達は一斉に我々を見上げ、手を振ったり帽を振ったりする。地上部隊にとって、私達は非常に頼もしい援軍だそうだ。味方の航空機が上空にいる限り、敵は自陣の露見を恐れ一発も撃ってこないという。10分でも、5分でも長く上空に留まってくれと、地上兵と話す度に懇願されたことが再三ならずあった。
長い長い進軍の放列が続く。将校も下士官も兵も、軍司令官も参謀も段列兵も、戦車も自転車も、そして飛行機も黙々とシンガポールに向かい進撃を続ける。
シンガポールへ、シンガポールへ。暴虐なる欧米から亜細亜を開放するためのこれは『聖戦』なのである。
下記文章は、丸メカニックNo.35「九九式襲撃機/軍偵察機」
記載の内容を参考に、手記風に書き下ろしたものです。
※各写真はクリックで拡大画像にリンクしています。
今回、この『九九式襲撃機と共に その2』を製作するにあたって、古くからの友人NAO310氏に『タミヤ製九七式中戦車』を製作依頼し、快諾をいただきました。そして、ご覧の通りの素晴らしい作品を作っていただいた上、わざわざ東京からここ松本まで持参していただいたのは、望外の幸でした。おかげで素晴らしい作品に仕上がったと自負しております。(自我自賛の極み)
また、中学生モデラーである技術ナシオ氏には、受験生であるにもかかわらず貴重な時間を割いていただき、銀輪部隊について色々調べていただき大変参考になりました。
お二人にはこの場を借りて深くお礼申し上げます。