『ゼロ戦 坂井中尉の記録』 (講談社)
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 この本は小学校の高学年に読みました。私の父母は子供の頃に戦争を体験している世代で、私は幼少のみぎりから戦争中の食料事情の悪さや、今からすれば偏った教育、満州から引き上げて来た人たちの苦労話しなどをよく聞かされてい、幼い頃からなんとはなしに大東亜戦争(大平洋戦争とは言わない)というものが漠然と頭の中にありました。やがて、その漠然としたのものは興味へと変わり、小学校の図書館で子供向けに書かれた戦記物なんかを読むようになっていきました。小 学校5年生の頃の愛読書に秋本実氏の「日本の戦闘機」(タイトルなどうろ覚えだったが、ググってみたらまさしくこの名前でした。)なんてのがあります。そんな私を両親はどう思ったのかは知りませんが、たぶん私の飽きっぽい性格を見抜いた上で、危険な方向(例えば山口二矢のような少年右翼に走ってしまうとか)にいくこともなかろうと、そんな本を読んでいても何も言いませんでした。本屋で「ゼロ戦 坂井中尉の記録」を見つけて親に買ってくれとせがんだ時もあっさり買ってもらえました。
 さてこの本は、坂井三郎氏の日中戦争から日米開戦、ガ島上空での負傷、重傷を負いながらの帰還、そして硫黄島での死闘までを平易な文体で子供にわかりやすく書いてあります。多分、大空のサムライの児童書版といったところでしょうか。(すみません、大空のサムライ、読もう読もうと思いつつ今だ未読です)
 子供の頃、圧倒的に戦史の知識がない頃はピンと来なかったのですが、今読み返してみると、坂井氏が負傷してガ島からラバウルに帰還する途中で会ったガ島方面へ向かう重巡『青葉』が、戦史ではその後ルンガ湾に突入し、第一次ソロモン海戦で大戦果をあげたことが私の頭の中で有機的に結びついて、「なるほどな〜負傷して内地に戻ったのはこの頃のことだったのか」などと感動を覚えました。また、最後の方で坂井氏が硫黄島上空で零戦を駆ってグラマンF6Fと死闘を繰り広げるところでは、「零戦(たぶん)52型とF6Fも、パイロット次第では、互角以上の戦いができるではないか」などと思ったりもしました。
 ともあれ、この本は先の大戦の意義、殺し合うことの不毛さを訴えかけるとともに、不断の鍛錬と研究心、そして不屈の精神力があれば生き残ることができるということを、幼い私に教えてくれた本でした。惜しむらくは、その教えが少しも私の身に付かなかったことでしょうか。(お約束の締め)

2006年8月24日 記
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