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 わずか50メートル前方にさらけ出した敵の姿。わたしはやろうと思えば、操縦者そのものを撃つことができた。しかし私はエンジンの一番前を狙った。
ダダダダ。
ものの見事に命中した。瞬間、彼は落下傘で空中に飛び出した。
下を見ると海岸線だった。
「戦争とはいいながら、ほんの少し前まで、私と顔を見合わせていた君を殺してすまなかった」そんなような言葉を、私は心のどこかで言っているのを聞いた。
 小学生の頃読んだ『ゼロ戦 坂井少尉の記録』に感銘を受けて、いつかこの本の中のシーンを絵で再現してみたいと思っていました。この冬、たまたまフジミの零式艦上戦闘機21型を作ったので、ついでにグラマンF4Fも作って、まずは昭和17年8月7日ガダルカナル沖上空のグラマンF4Fとの空戦の模様を再現した次第です。
 ネット上で調べると、この空戦で坂井氏に撃墜されたF4Fはアメリカ海軍のジェイムス・ジュリアン・サザーランド大尉で、この日、空母サラトガから発進したものです。坂井機に対して反撃が出来なかったのは、機銃が故障したからともいわれ、戦後の調査で、墜落した機体も見つかっているそうです。
 尚、坂井氏はあるいは殺してしまったのかもしれないと書いていますが、サザーランド大尉は落下傘で脱出後、ガダルカナル島に下り、原住民の助けを借り、海軍に復帰して、飛燕など日本機を何機か撃墜し終戦を迎えているようです。
 機会があれば坂井少尉の記録シリーズ第2弾も制作してみたいと思う次第であります。(いつになることやら分かりませんが…)
 なお写真に添えたコメントは講談社文庫『ゼロ戦 坂井少尉の記録』より抜粋、要約したものです。
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